Vägen för alla

スウェーデンで学んだこと、生活、色々。

スウェーデン社会に参加する初めの一歩

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13日月曜はSamhällssamtalサムヘルスサムタルへ。

SamhällssamtalはVärmdö市が受け入れた難民の方々がスウェーデン社会を知るためのオリエンテーションクラスです。

月に1回×4回で、

民主主義

ジェンダー平等

暴力の禁止

子供の権利

HBTQ

などスウェーデン社会の仕組みや基本的な価値観を学びます。

基本的な価値観をまなぶことで、スウェーデン社会に参加しやすくなります。

 

オリエンテーションクラスの場所を提供しているのはSvenska Kyrkan(スウェーデン教会)ですが、キリスト教の布教とかそういうことはしません。

 

参加したのは、

今回のタリバン復権の混乱から避難してきたアフガニスタン人グループと、

イランから難民としてきたアフガニスタン人グループ。

 

てっきり私もオリエンテーションに参加できるのかと思いきや、

子どもたちのお世話をすることに。

就学前のちびちゃんたちと遊んだり、ちびちゃんのお母さんたちとお茶したり、教会の職員さんとお話したり。

甥姪の面倒しか見たことないのでどうしたもんかなと焦りましたが、教会職員のおじさんが慣れた様子で子どもたちと遊んでくれて助かりました。

教会は子ども向けのアクティビティをよくしてるため職員さんも慣れてるしおもちゃも沢山あるし、子どもたちには楽しい場所のようです。

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ぶっちゃけると、

大学院の授業の一環としてインターンしてるのに子守りすんの!?

普段はボランティアの人もいるそうですが今回は手配できなかったようで、ボランティアの穴埋めやんけ…とがっかりしてました。

が、昨日ボスになんでオリエンテーションに同席できなかったのか聞いてみたところ、

 

教会が特に大切にしているのが、

オリエンテーションをする側と難民の方々が信頼関係を築くこと。

4ヶ月間にわたっておこなわれるオリエンテーションで難民の方々が安心して自由に発言する空間は、信頼関係のもとで成り立ちます。

 

教会側がここ何年もオリエンテーションをしてきてわかったことが、

 

外部の人間とくに自治体の人間がいると、やっぱり難民の方々は遠慮してしまったり警戒してしまう傾向があること。

 

自治体でインターンしている私は、自治体を代表している面もあり、だから教会は私がオリエンテーションに参加するのを避けたようです。

納得ですね。

 

オリエンテーションがどんなふうに行われてるのかSpråkstöd(通訳とここでは訳しますが、通訳以上の仕事をしていてとても大事な役割を担っているのでまたまとめます)に聞いてみたところ、

オリエンテーションする側と参加者が円になってすわり、説明を聞いてわからないことや疑問に思う事を自由に皆で話し合うそうです。

文化や宗教の異なる国から来た人にとって、今回はイスラーム圏からきた人たちですが、スウェーデン的なジェンダー平等やHBTQは”繊細な”テーマです。

だからこそ慎重に、時間をかけてじっくり話をする必要があるわけですね。




スウェーデンの価値観

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インターン先のVärmdö市は8月にアフガニスタンコンゴからあらたに難民を受け入れたので、毎日なにかしら先輩たちは難民の方々と面談があり、私もくっついていっています。

 

Värmdö市で受け入れたNyalända(ニイアーレンダ、新しくスウェーデンに来た難民)はスウェーデン社会での生活再建を目的とするetableringエタブレ―リング・プログラムに参加します。
難民の方々がVärmdö市に到着したら、まず担当者は簡単な説明をし、その後1週間以内に再度フォローアップ面談、という流れ。


面談では、
プログラムの概要
子どもたちと大人がどんな学校に行き、
これからどのような可能性があるのか、
スウェーデンがどのような価値観を大切にしているのか
を伝えます。

 

簡単な言葉で短くまとめられたスウェーデン価値観リストは、
ペルシャ語アラビア語、ティグリーニャ語、スワヒリ語ソマリア語など各言語で読めるようになっています。
↓これはスウェーデン
画像1

画像2

日本語はないのでジェンダーにかかわる部分を訳してみました。

Kön och Jämställdhet

(生物学的)性別とジェンダー平等

ジェンダー平等とは女性と男性の間での平等を指す。

女性と男性は同じ権利と可能性を持つ。


また女性と男性は、社会と自身の人生に影響を与える権力を同じように持つ。


誰かが、ある人を男性もしくは女性だという理由でその人を不当に扱う場合、それは(生物学的)性別による差別だとみなされる。

 

スウェーデンにおけるジェンダー平等に関する法律
スウェーデンでは教育のために子どもを殴ることは違法であり、(子どもへ暴力をふるった場合は)刑務所へ送られる。

スウェーデンでは、家族の中で暴力を用いることは違法である。
家族の中で誰かが暴力をふるった場合、(当事者にかかわらず)誰でも警察へ通報することができる。

スウェーデンでは、自分のパートナーをなぐることは違法である。
法律によると、家庭での女性への暴力は、刑務所で罰せられうる違法行為である。

 

(生物学的)性別と性的志向の規範
スウェーデンでは、すべての人が性別に関わらず自分の望むパートナーと生きる権利を持つ。


自身がどちらの性別に属するかの認識は、通常、性的アイディンティティ(性的自己同一性)と呼ばれる。
性的アイデンティティは、その人がもつ肉体で決定されるのではなく、その人がどちらの性別に属していると感じるかによる。


ある人がホモセクシュアルバイセクシュアルであることで、もしくはある人が女性や男性がどうあるべきかという規範に挑戦するやり方で(自身を)表現することで、

その人が不当に扱われる場合、それは差別である。これは犯罪とされる。


(難民の方々にわかり易く簡単にまとめてあるだけなので、ジェンダーを勉強している自分としてはツッコミどころがけっこうあります(笑))

今回参加させてもらった面談は、イランからきたアフガニスタン難民のお母さんと娘さんのためのものだったのですが、

お母さんは

あらー、私、イランでは夫にお腹を殴られてたわ。ここでは犯罪なのね。

とコメント。
反応しづらい先輩と私…。
スウェーデンでは暴力が日常の一部にならないような生活を送ってほしいし、そんな生活ができるようにサポートしていきたいと思いました。
娘さんはというと、

わたし、これ、イランの学校で習ったよー

とびっくり発言。
通訳者も先輩も私も、

え⁉イランで!イランなのに⁉とびっくり。

世界には色々な価値観があって、ヨーロッパの国ではジェンダー平等と子どもの権利を大切にするって先生が教えてくれたよ。
様々な価値観があることを教えてくれるかどうかは先生次第だけれど、私の先生はちゃんと教えてくれたの。

と言っていました。
そういえば、イランで仲良くなった女の子たちもジェンダー平等やフェミニズムについて熱く語っていましたし、フェミニズム運動は中産階級以上の女性たちに人気があります。
娘さんの先生ももしかしたらフェミニストだったのかも?

インターン、始まりました。

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インターン、始まりました。

修士課程2年生秋学期はインターンを通して実地で学びます。

私がインターンをしているのはストックホルム県Värmdö kommunヴァルムドー市役所にあるインテグレーション(社会統合)課です。

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移民女性である自分自身がこのインターン先を選んだ出発点は、

kommun(コミューン)地方自治体がどのように移民・難民のEtablering(エタブレ―リング)/Establishment/社会に根付くことをサポートしているのか、を地方自治体側からの視点で明らかにしたいということと

 

移民・難民女性自身がそのサポートをどのように経験し解釈し利用しているのかを明らかにしたいということ

です。

といいつつ、

移民・難民のインテグレーションやEtablering/Establishment/社会に根付くことというテーマは自分の修士プログラム(ジェンダー、移民と社会正義)ではほとんど触れられていないので、自分でもっと勉強し、インターンを通して実践の学びを深めていかないといけません。

さてさて、

課の名前はインテグレーション(社会統合)なのですが、私自身はインテグレーション(社会統合)よりもEtablering/Establishment/社会に根付くことに興味があります。

インテグレーション(社会統合)は、移民・難民が自分のアイデンティティを消して受け入れ国社会に同化する、というニュアンスがある方、

Etablering/Establishment移民・難民が自分のアイデンティティを大切にしながら受け入れ国社会を学び、その社会のなかで根付いていく、というようなニュアンスです。

スウェーデンの文脈でEtableringができるようになるというのは、

移民・難民自身が仕事をみつけ経済的に自立し、家族を養えることができるようになること

を第一に指します。

具体的にどんなふうにVärmdö kommunのインテグレーション課が難民の方たちをサポートしているのかというと、

2年間のEtablering/Establishmentプロジェクトを通して、Nyalända(ニイアーレンダ)/New commers/新しくスウェーデンに来た難民が社会に根付けるよう最初のステップを提供します。

住宅を提供したり、教育サービス(スウェーデン語学校、保育園や小中学校、高校)に繋いだり。

注)Kommun(自治体)におけるNyalända/New commersの定義は、国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)からMigrationsverket (Swedish Migration Agency 移民局)が受け入れ、各県の各自治体に割り当てるKvotflyktingar (難民)の人たちです。

 

今後の予定

私がインターンを始めた8月30日はたまたまタイミングよく、翌日31日にあらたな難民を受け入れたため、受け入れの様子から今後の手続きなど一連の流れに参加することができそうです。

前の週にはアフガニスタン難民の方たちが到着したばかりで、その多くが女性なのでこちらの方々のEtablering/Establishmentプロジェクトにも関わらせてもらう予定です。

 

9月はVärmdö kommunのインテグレーション課で日々のルーティーンを覚え、先輩たちにくっついて難民の方々と面談したり、Värmdö kommunと一緒に難民の方たちのEtablering/EstablishmentをサポートしているSvenska Kyrkanスウェーデン教会へいったり、というスケジュール。

 

全体のインターンのスケジュールはこんな感じ↓

インターン期間: 20週

1週36時間のインターンと4時間の自習

月に1度大学へレポート提出

最後の週は最終レポートの完成と発表、オポーネントがあります。

 

Värmdö kommunのインテグレーション課のスケジュールは↓

月曜から水曜 8:00-17:00

木曜 8:00-19:00

金曜 8:00-13:00

午前午後各15分のフィーカ、1時間昼休憩

私は36時間になるよう適宜調整してインターンしています。

 

大学に提出するレポートに加えて、インテグレーション課にもレポートを提出しないといけないので思っていたより忙しくなりそうです。当然か。

頑張ります。Kämpa!!!!

コロナ下にスウェーデンから一時帰国 2021年6月23日~6月27日 ② 関空到着後

24日8:40

到着後しばらく機内で待機。

関空に入ってからは、怒涛の検疫チェックポイントめぐりが始まります。

ちゃんとソーシャルディスタンスが守られててさっすが〜と思いました。

 

合計8箇所くらい?チェックポイントがあり、そのたびにパスポートやら陰性証明書やら質問票やらなんやらかんやらを見せたり書いたりします。

入国前に準備する陰性証明書、健康カード、誓約書以外にアプリのインストールについての確認書、待機施設入所前の確認書(アレルギーや食べれないもの、持病等を答えます)を追加でカキカキ。 

 

面白かったのは、コロナPCRテストのために唾液採取するスペース。

それぞれパーテーションで区切られていて、そこで検査用の唾液を容器にためます。

唾をためて容器に入れる姿はあんまり人に見せたいもんではないってのは日本的な感覚かもしれません。

唾液を貯めるために梅干しとレモンの写真が貼ってあって、古典的だのうとフフっと笑えました。

 

アプリの設定も懇切丁寧に教えてくれます。

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設定を教えてくれるスタッフさんがモバイルWi-Fiをそれぞれ持ってるので日本のSIMカードがなくてもなんとかなります。

アプリ類はダウンロードしてなければ関空でダウンロードできますが、

出発前にダウンロードしたり設定のやり方をざっと見ておくほうが時間短縮になっていいかと思います。

アプリの細かい設定、自宅待機中にすることなどは説明書をもらえるのでわざわざプリントアウトしなくてもいいです。

そういえば、

たくさんのスタッフさんが働いてるのですが、その多くが外国の方っぽかったです。

英語と日本語がペラペラ話せる人材ってなると、日本人ではなかなか見つからないのかなんなのか。技能実習生で安く働かされてないことを願います。

 

検査結果が出るまでぼんやりと待機。

自販機使えないしカフェもないので、機内でもらう水のペットボトルを取っておいたほうがよさほうです。

お腹も減ると思うのでなにかお菓子とか軽食をカバンに忍ばせておくことをおすすめします。

アムステルダムやアーランダ空港はベンチで充電できるスタイルなのですが関空は充電場所が意外と少ないので機内でフル充電にしておくと暇つぶしと睡魔との闘いの役に立ちます。

また、チェックポイント行脚は結構歩くので荷物は軽めのほうがいいです。

お子さん連れだとめちゃ大変そう…

 

12:00

結果が陰性だったので、入国手続、荷物回収、税関チェック(税関はきっちりカバンまで開けて調べていてコロナ前より検査が厳しくなったかも)。

出口でスタッフさんが待っていてその指示に従ってホテル行きのバスへ。

新大阪のアパホテルが隔離ホテルでした。

ホテルは厚労省日航ホテルとAPAホテルを借り上げているようです。

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写真はAPAホテル HPから。

アメニティ完備、ドライヤーもあるし、タオルも3日分備え付けられています。

13:35 ホテル着

隔離中の注意点(アプリでの位置送信、検温、厚労省の体調確認メールに返事すること)の説明を受けます。

お昼ご飯をもらえてうれしかったです。

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24日お昼ご飯 

ご飯は8時ごろ、12時ごろ、18時ごろに館内放送でご飯ですよーと連絡があり、お弁当が部屋の前に準備されます。

飲み物は部屋に事前に500ml5本に加えて毎食500mlのペットボトルがついてきます。

時差ぼけで朝8時とか健全な時間に起きるのは無理無理、ご飯はいいから寝よとか甘いこと考えてましたがさっさと回収しないと電話でたたき起こされます。

 

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24日晩ごはん

 

25、26日 

Wi-Fi強いのでパソコンで作業したり動画見たりしてました。

お風呂もバスタブがあってハッピー。

ベッドが快適なのでめっちゃ寝ました。お布団ふかふか。

館内には大浴場があり、新大阪駅まで近いしコロナがおわったらまた来たいAPAホテル。

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25日朝ごはん

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25日昼ごはん

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25日夜ごはん ここからサラダつきに。うれしー

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26日朝ごはん

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26日昼ごはん 野菜ジュースだ!ここからわらび餅的なデザートつきになります。

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26日 夜ごはん

 

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27日朝ごはん 最終日だからでしょうか、ミニケーキがついてきました

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27日 昼ごはん 


1日に一食はかならずゼリーがついてくるのはなんでなんでしょうか。

たまにはプリンと交代してもいいのよ…。

夜ごはんは必ずインスタントお味噌汁がセットです。うれしい。

お米がデフォルトで美味しいのは帰国者にとってご褒美です。

動かない割にご飯はボリュームたっぷりなので、空腹でひもじい…という思いはしませんでした。

 

27日

朝7時までに唾液を採取しドアの前に置いておきます。すっかり時差ぼけは治りました。

14:20検査結果判明。 このときスタッフの方から何時ころに迎えがくるか確認があり、ホテルの裏口駐車場に車を停めるよう言われます。

15:30を目安に各室退所が始まります。 スタッフの方がお部屋まで迎えに来てくれて、駐車場で見送り、という形でした。 自宅では引き続き自主隔離です。

スウェーデンの修士課程ってどんな感じなん? その2 2020年10月

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LUND

今回は10月の授業を振り返り

10月のテーマは、

Gender and Nation in Europe ヨーロッパにおけるジェンダーとネイション

ヨーロッパという概念の問い直し、ネイション国家(国民国家)の成立と市民権、ジェンダーイデオロギー、差別、ホモナショナリズムについて勉強しました。

担当教員はMaja Säger 先生 Diana Mulinari先生 Eda Farsakoglu先生

 

週に2日授業、1日ゼミ×4週 

ゼミはその週の課題図書をまとめ、クラスで議論するテーマを考える、という内容で

一番はじめに発表したグループのやり方がとてもクリエイティブで面白かったのでその後のグループはみんなそれを真似っこ(笑)

課題図書は1500ページほど。

成績はレポート提出(3000~4000字)とレポート提出後のオポーネントで決まります。

レポート課題は、2つ選択肢があり、私は②を選びました。

①An essay in which you elaborate on a theoretical problem/s that you have identified in the course literature and in relation to the themes of the course.

 

②A paper that combines a theoretical discussion with an ‘empirical’ study of some kind of material (due to the time limits, we recommend analyses of already existing material not involving extensive fieldwork. You could work with for example newspapers, pictures, interview material presented in other studies, art projects, legislation, political debate, etc.).

 

感想

今回も課題図書を読んでみんなについていくので必死。

実際どのくらい皆よめてるん?とクラスメートに聞いてみたところ、60%くらいのようでした。

テストは、レポート提出したその日にクラスの誰かのレポートを読み、レビューし、2日後にオポーネントをする、というハードスケジュールでした。

実はレポートテーマを決めるのにめっちゃくちゃ時間がかかり、レポート自体は提出したもののオポーネントには間に合わず…

ということで、12月にオポーネントの受けなおし。

再試は3人+先生だったのでリラックスしてできました。結果オーライ。

9月のオポーネントはレポートの草稿を提出しオポーネントするというスタイルでしたが、今回は完成したレポートをオポーネントしたので、クラスメートがどんなレポートを書いているのか見るいい機会でした。

私がレビューしたクラスメートは修士2年生の子のもので、彼女のレポートは書き方や論旨のもっていきかたなどとても整然としていて、ほんとに勉強になり今でもレポート書くときは参考にしてます。

 

授業内容の備忘録

国民国家=ネイションNATIONと国家の統治のテクノロジー

国民国家=ネイションNATIONの中で私たちが当たり前に生きている国民国家=ネイションを問い直す、というのが全体のテーマ。

ネイションの何が問題なのかを現代の移民問題において考えてみると、それはずばり排除のシステムということができる。

ネイションが市民権=国家を統治する技術をつかってどのように人々を囲い込み、

また国民として認めない人々をどのように排除しているのか。

歴史的にみると、ネイションはある特定の時代に作られた統治の概念もしくはテクノロジーといえる。(萌芽は1648年ウェストファリア条約

ネイションは人々を特定の土地にすむこと、特定の言語を話すこと、特定の文化や宗教をもつことという条件で人々を囲い込み国民として作り変えてきた。

逆にいえば、「国民」ではない人々を排除してきた。

例えば、

明治維新後、日本は国民国家=ネイションとなるべく「日本人」を創造することに邁進した。

アイヌ琉球を筆頭に様々な地域で多様な文化と言語をもつ人々がいたが、このような多様性は「日本人」に画一化された。

この画一化は、標準日本語の制定や国家の正統な国史=日本史教育というテクノロジー、教育・メディアを介した文化の内面化を通して行われた。

画一化の結果、日本人という国民意識愛国心の育成に成功する。

国民である「私たち」とよそものである「彼ら」の厳しい区別とその区別から生まれる差別

現代なら、教育、メディアに加えて国家対抗戦のオリンピック、ワールドカップ、世界選手権もネイションの強化につながってるかな。

 

ちなみに、

アメリカ生まれのスウェーデン人がスウェーデン市民権をもちアメリカに住んでいるように、グローバル化が進む現在は、ネイションは現実の地理的な国境という限定を拡大している

と同時に、コロナ下では国家の統治システムとしての国境がはっきりと目に見えるようになった。例えばデンマークではコロナの一番やばかった時期、国境の最前線である空港に銃をもった軍隊が配備されていた。国家がその気になれば国境は暴力性をむき出しにする、と思う。例)アメリカ・メキシコ間の国境の壁

 

ネイションの強さ=人口規模→ジェンダー規範の強化と女性性の管理

ネイションの強さは人口規模である。

少子化を危機と捉えているように、ネイションの強さ=人口規模の大きさという図式は今も変わってない。

国家の構成員となる国民を再生産するために、つまり子どもを産み国民を増やすために、男性と女性のヘテロカップルが規範(社会のルール)とされる。人口を増やす機能として人々の身体は、とくに産む性である女性の身体は国家に訓練され管理されているといえる。(ここらへんはミシェル・フーコーのBio Power参照) 

子どもを再生産できない在り方はヘテロカップル規範から排除される。

 

市民権システムにおけるヒエラルキー

納税する人々、納税するヘテロカップルがヒエラルキーの上、下にいるのは生活保護受給者や移民。

納税の「義務」や国民を再生産する「義務」はネイション国家を維持するために重要で、だからこそ納税する人々、納税するヘテロカップルがヒエラルキーの上位にくる。

一方でたとえ市民権を持っていても生活保護といった社会保障にたよる市民は、このヒエラルキーでは下になる。

社会の負担にならず「真面目にちゃんと働く」移民は、社会保障受給者の市民より上。

ここで対立意識が芽生える。

 市民権があれば生活は安定しやすく、なければライフチャンスは非常に限られ、かつどこの国の市民権を持っているかで国境を超える難易度が変わる。

例えば、

世界的に豊かな地域であるGlobal North出身の日本人は、国境を超えるときパスポートコントロールでほとんど問題なく通過できる。

世界的に見て、日本ほどビザなしで各国を旅行できる国は珍しい。

 

ホモナショナリズム

EUはLGBTQaに寛容な地域であるというイメージを作り上げている。

このイメージ戦略はLGBTQaに寛容な地域であるEU、そのEUにすむ「我々ヨーロッパ人」という意識をつよめ、ホモナショナリズムを強化している。

また、この戦略はLGBTQa社会運動をヨーロッパ化し、ヨーロッパの世俗的なLGBTQa社会運動を標準とする強い傾向をうんでいる。例えばLGBTQaパレードのグローバル化

この流れでは、ムスリムのLGBTQaの人々がLGBTQa社会運動から排除されがちになる。

 

授業の具体的内容と課題図書

Lecture 1. ’Europe’ and differentiated processes of in/exclusions I. 

Maja Sager先生

Key concepts:  *  citizenship  *  Europe  *  differentiation  *  nation Literature: 

 

Literature: Read first

Anderson, Bridget & Vanessa Hughes (eds.) (2015). Citizenship and its others [Available as e-book]. Basingstoke, Hampshire : Palgrave Macmillan. (Introduction and chapter 5)

 

Ayoub, Phillip M., & Paternotte, David (eds.) (2014). LGBT Activism and the Making of Europe: A Rainbow Europe? Basingstoke, Hampshire: Palgrave Macmillan. (chapter 1 (Ayoub & Paternotte), chapter 4 (Colpani & Habed) and chapter 11 (Ayoub & Paternotte)

Literature: Read second

Farrokhzad, Athena (2018) Europe, Where Have You Misplaced Love? An Open Letter from a Poet. Literary Hub. Available at: https://lithub.com/athena-farrokhzad-europe-where-have-you-misplaced-love/

 

Jonsson, Stefan & Hansen, Peo (2014). Introduction: The Past that Europe Forgot. In

Jonsson, Stefan & Hansen, Peo (2014). Eurafrica [Available as e-book]. Bloomsbury Publishing. (p 1-16)

 

Lecture 2. ’Europe’ and differentiated processes of in/exclusions II.

Maja Sager先生

Literature: Read first

Anderson, Bridget & Vanessa Hughes (eds.) (2015). Citizenship and its others [Available as e-book]. Basingstoke, Hampshire : Palgrave Macmillan. (Chapters 2, 3, 6 and 8)

 

Luibhéid, Eithne (2006). Sexual Regimes and Migration Controls: Reproducing the Irish Nation-State in Transnational Contexts, Feminist Review, No. 83, Sexual Moralities (2006), pp. 60-78 (18 pages).

 

Literature: Read second

Anderson, Bridget & Vanessa Hughes (eds.) (2015). Citizenship and its others [Available as e-book]. Basingstoke, Hampshire : Palgrave Macmillan. (Chapters 4 and 7)

 

Yuval-Davis, Nira (1997). Gender & nation [Available as e-book]. London: Sage. (Chapter 1, 2 and 4)

 

Lecture 3. Conviviality and creolization in contemporary Europe.

Diana Mulinari先生

Key concepts: *  conviviality  *  solidarity  *  humanity  *  multiculturalism   *  cosmopolitanism

Literature: Read first

Rodríguez, Encarnación Gutiérrez & Tate, Anne Shirley (eds) (2015) Creolizing Europe: Legacies and Transformations. Liverpool: Liverpool University Press.

 

Lecture 4. Gender, culture, nation.

Maja Sager先生

Key concepts:  *  culture  *   gender and/in nation  *  migration and asylum rights

Literature: Read first

Farrokhzad, Athena (2015). White Blight. Argos books. (72 pages)

 

Wikström, Hanna (2014). Gender, Culture and Epistemic Injustice, Nordic Journal of Migration Research, 4(4), 210-218. (9 sidor)

 

Literature: Read second

Yuval-Davis, Nira (1997). Gender & nation [Available as e-book]. London: Sage. (Chapters 3, 5 and 6)

 

Lectures 5 and 6. Antifeminism and care racism in the context of a growing European far right.

Maja Sager先生

Key concepts:  *  antifeminism  *  racism/s  *  gender and/in the far right

Literature: Read first

Mulinari, Diana, Neergaard, Anders (2014). We are Sweden Democrats because we care for others: Exploring racisms in the Swedish extreme right. The European Journal of Women's Studies, (21), 1, 43-56. (14 pages)

 

The following articles are from the special issue of Signs ”Gender and the Rise of the Global Right” issue 44:3 2019.

Graff, Agnieszka, Kapur, Ratna & Walters, Suzanna Danuta (2019). Introduction: Gender and the Rise of the Global Right. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 541-560. (19 pages)

 

Gökarıksel, Banu, Neubert, Christopher & Smith, Sara (2019). Demographic Fever Dreams: Fragile Masculinity and Population Politics in the Rise of the Global Right. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 561-587. (26 pages)

 

Corredor, Elizabeth S. (2019). Unpacking “Gender Ideology” and the Global Right’s Antigender Countermovement. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 613-638. (25 pages)

 

Case, Mary Anne (2019). Trans Formations in the Vatican’s War on “Gender Ideology”. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 639-664. (26 pages)

 

Literature: Read second

Sager, Maja & Mulinari, Diana (2017). Safety for whom? Exploring femo-nationalism and care-racism in Sweden. Women's Studies International Forum, https://doi.org/10.1016/j.wsif.2017.12.002

. (8 pages)

The following articles are from the special issue of Signs ”Gender and the Rise of the Global Right” issue 44:3 2019.

Mason, Carol (2019). Opposing Abortion to Protect Women: Transnational Strategy since the 1990s. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 665-692. (27 pages)

 

Luehrmann, Sonja (2019). “Everything New That Life Gives Birth To”: Family Values and Kinship Practices in Russian Orthodox Antiabortion Activism. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 771-795. (24 pages)

 

Abji, Salina, Korteweg, Anna C. & Williams, Lawrence H. (2019). Culture Talk and the Politics of the New Right: Navigating Gendered Racism in Attempts to Address Violence against Women in Immigrant Communities. Signs: Journal of Women in Culture and Society, 2019 44:3, 797-822. (27 pages)

 

Lecture 7. Homonationalisms, contested belongings and building solidarity across differences.

Eda Farsakoglu先生

Key concepts:  *  homonationalism  *  (anti-Muslim) racism  *  belonging  *  queer politics *  rights  * building solidarities

Literature: Read first

Ayoub, Phillip M., & Paternotte, David (eds.) (2014). LGBT Activism and the Making of Europe: A Rainbow Europe? Basingstoke, Hampshire : Palgrave Macmillan. (chapter 10 (Moss))

 

El-Tayeb, Fatima (2012). ‘Gays who cannot properly be gay’: Queer Muslims in the neoliberal European city. European Journal of Women's Studies, 19:1, 79-95. (17p)

 

Haritaworn, J. (2012). Women’s rights, gay rights and anti-Muslim racism in Europe: Introduction. European Journal of Women's Studies, 19(1), 73- 78. (6 pages)

 

Kahlina, Katja (2015). Local Histories, European LGBT Designs: Sexual Citizenship, Nationalism, and ‘Europeanisation’ in Post-Yugoslav Croatia and Serbia. Women’s Studies International Forum, 49:1, 73-83. (10p)

 

Literature: Read second

Petzen, Jennifer (2012). Contesting Europe: A call for an anti-modern sexual politics. European Journal of Women's Studies, 19:1, 97-114 (17p).

 

Puar, Jasbir (2013). Rethinking Homonationalism. International Journal of Middle East Studies 45: 336–339. (3p)

 

Rahman, Momin (2014). Queer Rights and the Triangulation of Western Exceptionalism. Journal of Human Rights, 13, 274–289. (15p)

 

 

 

コロナ下にスウェーデンから一時帰国 2021年6月23日~6月27日 ①

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隔離先ホテルから

諸事情により日本へ一時帰国しています。

帰国前からホテル隔離の流れをまとめましたのでどなたかの参考になれば幸いです。

時系列

6月21日

11時40分 PCRテスト受ける、同日陰性証明書発行

6月23日 アーランダ空港からオランダ スキポール空港

     関空便へ乗り継ぎ

6月24日 関空着、検疫、ホテルへ移動

6月25日から27日まで3日間のホテル隔離

6月27日 自宅へ

 

搭乗と日本入国に絶対必要な書類

パスポート

陰性証明書

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00248.html

 

忘れてしまっても機内でもらえるもの

健康カード

https://www.forth.go.jp/news/000064120.pdf

 

忘れてしまっても関空でもらえるもの

誓約書

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00249.html

 

入国時に慌ててやればなんとかなるけど事前にやっておいたほうがいいこと

質問票WEBのQRコード

https://www.forth.go.jp/news/000063743.pdf

アプリのダウンロード(位置情報確認アプリOEL ビデオ通話アプリMySOS 接触確認アプリCOCOA

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00250.html

https://www.mhlw.go.jp/content/000752493.pdf

 

PCRテスト

迅速に確実に日本の証明書にも対応してるクリニックということでストックホルムの日本人の中で有名なLäkareintygDirekt

直近で関空に帰った知り合いもここでテストを受けていたので私もLäkareintygDirekt Solna centrumにお世話になりました。

このクリニックは、日本の陰性証明書のひな形を持ってる上に、検査をしてくれるお医者さん?看護師さん?も「オッケ~、日本に行くのね。日本の陰性証明書で書いとくわ」と慣れた様子で安心。

6/21の11:30にテストを受けて、結果と証明書は18:00にはメールで届きました。

めっちゃ早い!!

お値段は1695クローナと、ええ商売しとんのう……と言いたくなりますが、安心代ですよね。

クリニック→LäkareintygDirekt Solna centrum

https://lakarintyg.se/en/ 

+46 8 710 99 90

 

PCR Standard 1695 kr

Travel certificate by email within 6-12 hours after sampling. 

 

23日4時30分 アーランダ空港の様子

チェっクイン2時間前に空港へ到着したものの、すでにKLM とAir Franceの提携便チェックインカウンターには長蛇の列。

ソーシャルディスタンスはなし!

アーランダ空港のホームページには、空港内ではマスク着用してくださいと書かれてますが、この長蛇の列にはなんとマスクをしていない乗客もちらほら。まじか…

コロナPCRテストの証明書を見せたりしないといけないからか、コロナ前よりはるかにチェックインに時間がかかります。

さらにカウンターが2-3個しか開いてないため手続きが牛の歩みでした。

早めに空港行くのが正解

また、すべての乗客が搭乗するまで時間がかかる(多分KLMはチェックインカウンターもっと効率化しないとあかんわ)ので、フライトが遅延する可能性はままありそう。

実際、私の利用したフライトは15分遅延しました。

乗り継ぎ時間は充分取っておいたほうが安心ですね。

オランダ スキポール空港行きはほぼ満席!

ちなみにSASはカウンターが5-6開いてるし、ソーシャルディスタンスをちゃんととってる様子でした。

 

オランダ スキポール空港とフライトの様子

開いてない店はあるものの、まあまあ人が戻ってきている様子。

乗り継ぎ6時間待てないほど悪い環境ではないけど、Wi-Fiぶちぶち切れて鬱陶しいです。

関空行き便はそれなりに混雑していて3列シートに二人は座ってました。

私はたまたま3列シートを独占できてラッキー。

ご飯は…相変わらずのKLMでフィンエアーが恋しくなりました。

飲み物のサービスはちょこちょこ来ます。

 

次回は関空とホテル編です

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6/20/2021にセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)をテーマに講演会を行います。

お申し込みは以下から

北欧在住日本人で人権をテーマに勉強会をしていまして、

今回は主催者の方のご尽力により#なんでないのプロジェクト代表の福田和子さんと産婦人科医の高橋幸子医師さんを講師にお招きしました!
講師のお二方の対談という形式で進めていきますが、具体的などんな内容をお話していただくかはこれから講師のお二方と人権会メンバーとゴリゴリ決めていきます☺
私は司会進行を担当するのですが、初めての司会進行なのでカミカミにならないよう、お二人が心地よくお話していただけるよう今から練習がんばります。

セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)というと、どうしても女性の問題と捉えられがちですが、セクシャル・リプロダクティブ・ヘルスもライツも男女両性にかかわるテーマです。
そもそも男性もしくは女性だけで生殖って成り立ちませんからね…。

性の健康に関して言うなら、日本は学校での性教育が足りてない上に、性について家庭で話すのをタブー視されていて、なかなかきちんとした情報を大人も子供も持ってないのが現状です。
しかもアダルトビデオやマンガなどネットで手に入り放題で、性に関する間違った情報、性の商品化、偏見があふれています。


自分を、相手を大切にしながら、安心して性の健康を楽しめること

自分がどんなセクシャリティ性的志向、性)であっても自信をもって自分らしくいられること

恋人をもつ/もたない、家族をつくる/つくらない、子供をもつ/もたないを自由に選択し、その選択に罪悪感を感じたり、誰かに、社会に、国家に、批判されたりしないこと

このようなことをみんながちゃんと約束される社会は、だれにとっても生きやすいのではないでしょうか。

今回の講演会をとおして、みなさんと一緒に学び、みんなが大切にしあいながら支え合って生きられる豊かな社会を考えていければと思います