Vägen för alla

スウェーデンで学んだこと、生活、色々。

YES MEANS YES Samtyckeslagen スウェーデンの性交同意法 その1

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今年はコロナ危機により、女性への暴力ドメスティック・バイオレンスが世界の様々な国で増加しています(UN women.2020)。

私たち一人ひとりが他人事でなく我が事として、女性に対する暴力を無くそうと真剣に取り組まないといけないということを改めて認識しました。

経済危機やパンデミックによる危機、戦争による危機など社会が危機的状況になるとまず女性と子どもたちが深刻な暴力にさらされます。

しかし女性は、危機においてだけでなく日常生活でも暴力にさらされるリスクを抱えています。

日本の場合、暴力、ここでは性犯罪に焦点を当てますが、に巻き込まれたそのあと正しく加害者が裁かれていないという司法の問題や、そもそも女性の性的自己決定権をきちんと尊重するという社会の共通理解が育ってないなど課題が山積みです。

 

日本では2017年にようやく110年ぶりに性犯罪 に関する 刑法の規定が改正されました。が、改正後の2019年に名古屋地裁岡崎支部は、同意のないまま実の娘をレイプした実父に無罪判決をくだし、2017年の改正が十分ではないという現実をつきつけました。(NHK.2019)

2020年は2017年の改正で不十分だった性犯罪の刑法見直しを実現しようという人々の声を受けて、性犯罪に関する刑事法検討会が発足され9回にわたり検討会が開催されています。(法務省

 

性犯罪に関する法改正、というと実はスウェーデンは2018年に性犯罪の刑法を改正し、相手の同意がないまま性行為をすることを犯罪として処罰するようになりました。(刑法第6章第1条から第15条、Sveriges Riksdag)

 

Samtyckeslagen サムテッケスラーゲン Sexual consent law 性交同意法

と言い、スローガンは

 

Yes Means Yes  

 

です。

この法律では、性交に参加する「 Yes イエス」という自主的な相手の意思を確認できなければレイプとしています。

日本記者クラブ主催で行われた 「スウェーデンの性交同意法 強制性交とは何か」 という講演会がわかりやすく法改正の経緯、性交同意法の内容とポイントを説明していて大変勉強になりました。

この記事では私自身が大事だなと思ったところをピックアップし、適宜法律を参照しながら補足しました。

講演者はヴィヴェカ・ロングViveca Lång司法省上級顧問、ヘドヴィク・トロストHedvig Trost検察庁上級法務担当です。

 

性交や性的行為において皆が大事にしないといけないことは、

全ての個人がセクシャル・インテグリティーと性的自己決定権をもち、それが尊重されなければならないということ。これが大前提。

Every individual has the rights of  sexual integrity and sexual determination. These must be respected.

 

Samtyckeslagen Swedish sexual consent law 性交同意法では、

The voluntary participation is a key and basic requirement. 

当事者の自発的な参加を最も基本的な要件としています

Whether voluntariness has been expressed through words or deeds or in any other way is important.

性行為への自発的な参加の同意が言葉や行為、またはその他の方法で表現されているかどうか が大切。

なので、相手がはっきり性行為に参加する同意を示さなかったのに、性行為に及んだ場合、それはレイプにあたります。

例えば、被害者が単に受動的で、NOとはっきり言わなかった場合です。

it is also illegal to have sex with someone who hasn't expressly given their consent.

F.e. In the case that the person is just passive and doesn't say NO clearly

 

法律は、被害者が拒否したかどうかじゃなくて、

加害者が被害者の同意を確認するためにどんなことをしたのか、

に焦点をおいています。

The law puts its  focus not on whether victims have clearly expressed their rejection of participation, but on how much effort  perpetrators have made to confirm victims' consent.

 

また、法律では性行為に至る前の、加害者と被害者の関係が重視されます。

行為に参加する当事者が

意思を尊重されていると認識でき、

自由に拒否を伝えられ、

互いを尊重しあう対等な関係を持っている

というのが大前提。

 

The prerequisite for sexual activity is that participants create relationship to be able to  acknowledge that 

1 they can feel that their will is considered

2 they can express rejection without being harassed by any fear

3 they respect each other



はっきりした参加の言質を相手が示しても、同意があると認められない状況は以下

The case that the consent is not approved as consent even though the victims express clearly their consent. 

 

①相手方が行為者に依存する関係にあることを乱用して、相手に性的行為に参加させた場合   

   教師と生徒、先輩と後輩、上司と部下など(刑法第6章第1条3項)

In the case of that the perpetrators utilize positions that have strong influence against victims. F.e.. teacher and student, employer and employee 

 

②相手方が15歳以下の子供で、その子供が性行為に同意した場合 (刑法第6章第4~6条)

15歳以下の子どもが性行為に同意したとしても、その同意は同意として認められない。

15歳以下の子どもとの性行為は、いつでもどんなときでも 違法 

Concent of the child is not relevant, sex with children (Under 15 years old) is ALWAYS criminal. 


もし加害者が親もしくは養育者である場合、子どもが15歳以上で18歳未満であったとしてもレイプとなる。

If the perpetrator is parents of the child or person who the child is raised up by, it is rape even if the child is over 15 years old.

 

性犯罪の法律改正についてはInstagramでもVoice up Japanや様々な団体が積極的に記事をポストしてます。多くは、イギリスやカナダのNo Means No いいえ は いいえ をベースにした法律を紹介しています。

スウェーデンの Yes Means Yesはそれらより一歩先に進んでいますが、2018年に施行されたばかりなので、今後どのように実際の犯罪でこの法律が運用され、どの程度効果があるのかは検証中なようです。

なので、日本の文脈では No Means No いいえ は いいえ を規範にした法律を実現することをまず目指したほうが良いのかもしれません。

 

Reference

法務省.性犯罪に関する刑事法検討会,

http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00020.html

 

日本記者クラブ.(2020).「スウェーデンの性交同意法 強制性交とは何か」.https://www.youtube.com/watch?v=HJGq9QBhfmw&list=PLLp7JirMpDlyndkcedrr4LCSE4oXi2h9F&index=22&t=2s

 

NHK.(2019).“魂の殺人” 性暴力・無罪判決の波紋.

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4281/

 

Sveriges Riksdag.Brottsbalk. 

https://www.riksdagen.se/sv/dokument-lagar/dokument/svensk-forfattningssamling/brottsbalk-1962700_sfs-1962-700#K6



UN women.(2020)”Press release: UN Women raises awareness of the shadow pandemic of violence against women during COVID-19”,

https://www.unwomen.org/en/news/stories/2020/5/press-release-the-shadow-pandemic-of-violence-against-women-during-covid-19